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“学びを発散する場”の創造:WWDCハッカソンから見るiOS Chapterの取り組み
タイミーのプロダクト開発組織では、技術軸ではなく顧客価値に基づいてチームを構成し、プロダクトを機能領域ごとに分割した職種横断チームで機能開発を進めています。その一方、各領域の技術力向上をリードしているのは職能別の「Chapter」と呼ばれる組織です。
今回は技術的な取り組みの一例として、2024年夏に社内初となる「WWDC(*)ハッカソン」を開催したiOS Chapterのご紹介とともに、ハッカソン参加メンバーによる座談会をお届けします。
※本記事の内容は2025年2月公開時点のものです。
*1)Apple社が毎年開催するイベント「Apple Worldwide Developers Conference」の略称。
iOS Chapterとは?
iOS Chapterは、タイミーのiOSアプリエンジニア全員が所属する組織です。普段は職種横断チームで開発を進めているiOSアプリエンジニア同士が、横のつながりを持つコミュニティとして存在しています。「iOSアプリ開発のハードルを極限まで下げ、開発者やユーザー一人ひとりの時間を豊かにする」をミッションに掲げ、iOSアプリの品質を向上させる活動を行っています。
<主な活動内容>
・週次定例会議(情報共有・技術的課題の相談)
・輪読会(ex. Swift6対応マイグレーションガイド輪読会)
・iOSアプリの開発におけるプルリクエスト/相互レビュー
・全社組織への技術的課題のエスカレーション
・状態管理の改善提案
- 自動テストの拡充提案
- UX向上のためのキャッシュ実装提案
WWDCハッカソン参加メンバー座談会
ここからはWWDCハッカソンを主催したiOS Chapterの岐部さんと参加メンバーの早川さん、大塚さんの座談会をお届けします。ハッカソン企画の経緯や参加理由、参加によって得られたことなどを話してもらいました。
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──WWDCハッカソンを開催しようと思った理由はなんだったのでしょうか?
岐部:私自身、シンプルにWWDCのセッション動画を見るモチベーションが低かったんですよね。普段、私たちは提供できる価値をベースに機能開発をしており「⚪︎⚪︎をやりたいから、この技術を使おう」という順番で物事が決まっていきます。それに対してWWDCでキャッチアップした技術を発散したい場合は「この技術を使いたい。この技術が活きる機能ってなんだろう」という逆の順番になるんです。
なので、運良く自分が所属するチームにマッチする機能が発表されていなければ、WWDCの学びを業務に還元しにくくて……。もう少し時間が経てば和訳されたわかりやすい記事も出てくるのに、一次情報を英語で取りに行くメリットが薄いと感じていたんです。そこで「学んだ技術を発散する場をつくれば良い」という発想になったのが、企画のきっかけでしたね。
早川:わかります。僕も「活用する場がないかもしれない」と感じていました。当時、個人開発をしていたわけでもなかったので、どうしようかなと。そんな中、Slackで岐部さんがハッカソンを提案しているのを見て、率直に「やってみたい」と思いました。
大塚:ちょうど良い機会でしたよね。自分はもともとWWDCの発表を熱心に見ていたわけではなかったんですけど、一歩踏み出そうと思うきっかけになりました。
岐部:みなさんが私と同じような想いを抱いて、参加してくれたのは嬉しいですね。一見すると、業務に直結する取り組みには見えなかったかもしれませんが、エンジニアが市場価値を維持するためには新技術のキャッチアップは不可欠です。タイミーのメンバーがiOSの新技術を把握し、iOSアプリエンジニアの存在感を向上させられる機会を創出できたらと思っていました。
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──岐部さんのテックブログでも紹介されていましたが、2営業日という短い期間でアウトプットもたくさん出ていましたよね。ハッカソンをやってみて率直にいかがでしたか?
岐部:iOS Chapter以外から参加してくれた方がいて、予想外でしたが「こういうのも良いな」と感じました。あえて最初から参加者を決め切らずに曖昧にしたからこそ、自然発生的な交流も楽しめたのかなと思いますね。
早川:純粋に楽しかったですね。興味はあってもなかなか活かせない技術を、実際のプロダクトをサンドボックスにして試せる機会はほとんどありません。すごく貴重な体験だったと思います。やはり興味はあっても実際に手を動かさないと知識としては浅いんですよね。「ハッカソンをやるなら」といろいろな資料をしっかり調べたりもしたので、知識を深める機会にもなりました。
大塚:それはありますね。自分も気になっていた技術をタイミーアプリで実装できたのは良かったです。実際にやってみたことで、プロダクトで実装する場合の難易度や工数感の参考になりました。
ちなみに、自分はログイン周りのパスキー認証を実装したんですけど、そのバックエンド側の実装をバックエンドエンジニアの方が手伝ってくれたんです。そのおかげで実現できたので、すごく感謝しています。いつか本当にタイミーで実装できると良いですね。
早川:成果発表会をしたときに「成果物」へのポジティブなリアクションをたくさんもらえたのも嬉しかったです。個人的には「プログラミングを始めた頃の楽しさ」みたいなものを思い出せたなと。ハッカソンとは関係なく、これからも新しい技術を取り入れて、カジュアルにみんなに共有していこうという気持ちになりました。
▼主催の岐部さんによるWWDCハッカソンに関する記事
ハッカソンの成果物などの詳細はぜひこちらをご一読ください!
──最後に、企画者の岐部さんから今回の取り組みで得られた「価値」を教えてください。
岐部:大きくは二つですね。一つめは、早川さんや大塚さんなどハッカソンに参加したメンバーの存在感の向上です。今回のハッカソンのオンライン成果発表会はチームの垣根を払い、全体に呼びかけました。当然視聴者は参加者の存在を認識しますし、同じチームでもなければ知らなかった「メンバーの仕事ぶり」に触れることができます。0から1を埋める程度ですが、iOSアプリエンジニアの存在感を向上させるというところに少しは寄与できたと思います。
二つめは、参加者の知識拡充の一助になったことです。WWDCハッカソンをするにあたって、2024年に限らず過去数年分のインデックスを見て新技術のキャッチアップをしたと思います。それだけでもすごく勉強になりますし、私自身は何より学びのモチベーションが上がったことが最大の価値でした。
メンバーが自発的に行動できるチームを目指す
iOS Chapterは、特別な取り組みやフレームワークがなくても、メンバー一人ひとりが自発的に行動できるチームを目指しています。
今回のハッカソンのような取り組みは一つのきっかけに過ぎません。iOS Chapterという枠組みを超えて、会社全体の価値向上のために、自らやりたいことを見つけ、プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーと相談しながら主体的に取り組める文化をつくりたいと考えています。
新しい技術への興味を持ち、それを学び、成果をわかりやすく説明できる。そして、その活動が他職種からも理解され、支援される。そんな安心感を持って技術向上を目指せる環境を理想としています。
お話しできることを楽しみにしています!
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(取材構成編集・文:Mamiko Kamiya)